第1部(1〜7巻)感想
若月佑美さんリチャード、有馬爽人さんリチャード、両バージョンの感想です。
『ロミオとジュリエット』的でもありながら『ヘンリー6世』にきっちり落とし込み、この2作以上に衝撃的で悲劇的です!
原案『ヘンリー6世』と全く違うとも言えますし、最終的には原案通りとも言えると思います。そして、やはりロミジュリっぽいですよね。
ランカスターの王子エドワードの退場回。『ヘンリー6世』準拠ながら、エドワードのリチャードへの恋の終わりと絡めて美しく翻案されています。無理筋かもしれませんが、『二人の貴公子』オマージュも考えました。
27話は、多分詳細に史料準拠で、史料アレンジの面白さに気づかされこのタイトルにしました。
26話表紙は赤い薔薇に埋まったリチャードで7巻の表紙は白地にマーガレット。色としては逆ですが、2人のことや薔薇のことを書きました。
クライマックスで話の盛り上がりも素晴らしく、『ヘンリー6世』の変換の仕方も感動的です。
盛り上がる展開です。『ヘンリー6世』は23話から25話に飛ぶ形ですが、史料が素晴らしくアレンジされている回ですね。
『ヘンリー6世』踏襲で、エドワードとウォリックの対立、父の敵討ちでヘンリーを殺そうとするリチャード、という愛憎を強調する展開に思えます。
ヘンリーの台詞やジョージのエピソードに『ヘンリー6世』の演出的采配を感じます。セクシュアルな話への踏み込み方もすごい回です。
2人の約束が、切ないままになった『十二夜』+ピラマスとシスビーの感じです。21話の主題歌は“O Mistress Mine”ということで。
『ハムレット』、ピラマスとシスビー、『十二夜』あたりでしょうか、様々なオマージュやエピソードでぐらんぐらんさせられます。
イラスト集『荊棘の棺』って、もしかしたら「杉の柩」と掛けられているのかな、なんて話もしました。
リチャードの王冠への思いについて、バッキンガムとケイツビーが対照的な関係ですね。そして、ひょっとして『ジョン王』オマージュ??
ジョージが王に名乗りを上げたことで、リチャードが王冠への思いに揺れます。そして、ケイツビーの騎士ぶり。
『ハムレット』語りが多くなっていますが、アナ雪かも。でも、一番重要なのは夢の場面が12巻と重なる展開・構図であることですね。
『ヘンリー6世』の上に『ハムレット』と『リア王』か?と想像。扉絵のアンがオフィーリアのようです。
話の展開と「王を殺してはいけませんか」の台詞は、『ヘンリー6世』と『ハムレット』がミックスされた印象です。
キングメイカー・ウォリックがエドワード王と決裂した後、新たなキングメイカーに名乗りを上げるバッキンガム登場!
ヘンリーとの苺エピソードの回です。原案=11巻の苺エピソードと比較して、そこまでの変遷を追ってみました。王子エドワードの話への関わり方もとても面白い展開になっています。
ヘンリーの帰る場所について『ヘンリー6世』の台詞が変換され、エドワード王の結婚と重ねて描かれ、ヘンリー=“王冠より愛”ルートが示されているかのようです。
エドワード王とエリザベスの密会=“狩り”と並行して、それぞれ何らかの獲物を追うような展開ですね。
宴の場面では『リチャード3世』冒頭の独白が使われていますが、初登場のエリザベスは一寸シンデレラみもある気が……。
『ヘンリー6世』では、リチャード、兄エドワード、ウォリック伯たちが共に弔い合戦にをするのに対し、7話は、エドワードとウォリックの表の戦争と、その裏でのリチャードによる戦場での殺戮が同時進行で展開します。
『ヘンリー6世』ではエドワードとリチャード2人でヨーク公の心配を語り合えるのに、それに比べると、リチャードが独りで過酷な旅をするのか、と健気さが倍増します。
『ヘンリー6世』の、戦闘に巻き込まれた親子の話をリチャードの物語にしているように思います。推測ながら、原案の素晴らしい使い方だな、と。
読者投票1位の17話が宣伝アカウント(twitter)@baraou_infoで全話公開になったので、お祭りに乗れればと書きました。シェイクスピア・オマージュについて、一寸強引ながら考えてみました。
4話では、原案『ヘンリー6世』のヨーク公の台詞を下敷きにしつつ、ヨーク公の凱旋と、再びの戦闘での敗北とが描かれます。『薔薇』では、リチャードがヨーク公と一緒に戦うことはない代わりに、2人の繋がりが夢や精神的呼応の形で出てきます。
リチャードとヘンリーの再会の場は、『ヘンリー6世』からの台詞の配置がすごいことになっています。マーガレットの小箱と王子エドワードについても少し。
王位にいるヘンリーが羊飼いに憧れ、リチャードは王位が幸せをもたらしてくれると信じている。菅野先生はヘンリーとリチャードがHⅥで対照的に書かれていると思ったのでそう描きたかったというようなことをおっしゃっていましたが、HⅥの全く別箇所の2人の台詞…