『薔薇王』にシェイクスピアをさがして

菅野文先生の『薔薇王の葬列』についてシェイクスピア原案との関係を中心にひたすら語ります

ウィーン国立バレエ(配信)『ヌレエフ・ガラ』感想

おそらく7月3日am1:30まで無料配信中。

 

play.wiener-staatsoper.at

 

中盤のノイマイヤー振付『椿姫』黒のパ・ド・ドゥ、シュレプファー振付『眠りの森の美女』パ・ド・ドゥがとてもよくて、パ・ド・ドゥだけでも十分物語を感じられて素敵です。『椿姫』は以前の全幕配信と同じキャストに滝澤志野さんのピアノソロ。ここだけ見るのもありかと思うので、よかったらぜひ。2:19:30くらいからです。『ヌレエフ・ガラ』と冠して、この2作品がクライマックスに見えるのはどうかという気はしなくもないですが。

 

11作品中ヌレエフ作品は3作でシュレプファーの3作品と同数。しかも『白鳥の湖』から2パートで、『白鳥の湖』もとてもよいのですが実質は2作品。そこを気にしなければバラエティもあって楽しめます。以下、各作品の簡単な感想です(抜かしたものもあります)。

 

白鳥の湖

前半の『白鳥の湖』第1幕部分のジークフリート王子は木本全優さん。木本さんはやはり踊りがきれいで王子の品のよさを感じさせます。これはロットバルトがそんなに出てこないバージョンの方なのでしょうか(あるいはロットバルトが出てくる前の場面)? チャイコフスキー・パ・ド・ドゥの曲が出てくるのも華やかで好きです。

 

RAMIFICATIONS

シュレプファー振付『眠りの森の美女』での森の場面に似た雰囲気のコンテンポラリー的作品でした。音楽はリゲティで、これがシュレプファーの特色なのかなと思うと、この後でロマンティックなウィンナ・ワルツが出てきます。

 

FOUR SCHUMANN PIECES

ひょっとしたらストーリーがあったのかもしれませんがそこはわかりませんでした。メインが(女性でなく、男女ペアでもなく)男性ダンサーという構成が面白かったです。男女パ・ド・ドゥが多めとはいえ、男性同志のパ・ド・ドゥも、ソロと群舞もあります。男性のアラベスクを女性をサポートという構成も珍しい気がします。メインのダヴィデ・ダトと、パ・ド・ドゥの相手のヒョジョン・カンに華があって素敵でした。橋本清香さんも、今作の他、ブルノンヴィルの“La Ventana”でもメインを踊ったり多くの作品に登場。

 

『ウィーン気質』

シュレプファー振付でも(「でも」というのも変かも)、ニューイヤー・コンサートっぽい雰囲気です。元々はそこでの振付なんでしょうか。ただ……女性が黒のロングドレス、男性も社交ダンス的全身黒の(タキシードでなく、ハイネックのぴっちりした感じの)衣装なのはどうなんでしょう。シックかもしれないですが、白や明るい色の方が曲調に合うのではないかと思ってしまいました。

 

『グラン・パ・クラシック』

パリ・オペラ座のゲスト、ヴァランティーヌ・コラサンテとマルク・モローによる演目です。衣装がシャネルで、確か少し前に新作されたものだったと思いますが、これも実はあまり好きではなくて、見ることが多い白の衣装の方が私にはよく思えるんですよね。見慣れたものがよく見えるというバイアスかもしれませんが、チュチュもこれほどのボリュームでなくて、鋭角的な感じの方がこの作品には合う気がします。背景が同色で踊りが見えにくくなるのも今作では気になりました。この衣装なら背景は白では? 『椿姫』や『白鳥』は演劇的効果で暗めでもいいと思いますが、『グラン・パ・クラシック』は踊りの細部を見せることが優先な気がします。踊りが素晴らしかったのに、そこは大前提になってしまい、衣装の文句をいっぱい書いてしまいました。反省。

 

『椿姫』黒のパ・ド・ドゥ

最初にも書きましたが、この場面だけでも物語を観たような気持ちになる素晴らしさです。黒のパ・ド・ドゥって物語が濃縮されているんだなと思いました。全幕配信時と同じキャストのケテヴァン・パパヴァとティモール・アフシャーです。あの、ここの衣装はよくて、ピアニストの滝澤志野さんが黒のドレスなんですよ、で、最後場面でマルグリットの衣装が黒から白になっているので、カーテンコールも見栄えがしました。

 

『眠りの森の美女』

シュレプファー振付。こちらは恋の初々しさが体感できるような作品。ヒョジョン・カンとマルコス・メンハの感情表現がよいのだと思いますが、バレエ的でない動作が時々入って、そこでドキッとするというか美しさの中に肉感的なものをふと感じちゃうというか。甘い雰囲気の素敵な作品です。

 

ドン・キホーテ

ファンダンゴとグラン・パ・ド・ドゥの組み合わせ。町の踊り子表記ですがメルセデス的キャストがパパヴァ。え、さっきマルグリット踊ったばっかりなのに? キトリとバジルは若手組でしょうか。イオアンナ・アブラームのキトリのソロはためのあるパッセが印象的で、アルヌ・ヴァンダーヴェルデはトレアドール的振りをきっちり決めるクール系バジル。ただ、こちらも私には衣装がドンキっぽく見えませんでした。『ラ・フィーユ・マル・ガルテ』っぽい気がしてしまう。マクミランのロミジュリやマノンの衣装を担当したニコラス・ジョージアディスによるものなので、やはり私のセンスがないのかもしれません。後半衣装の話ばっかりになってますね。

 

白鳥の湖

第2幕のオデットと王子のパ・ド・ドゥ。こちらもオペラ座のコラサンテとモロー。この場面ってヌレエフ色薄めじゃないかなとは思うものの、まだ第2幕でしかも抜粋なのに恋愛感とほのかな官能性があってこちらも本当に素敵です。

 

作品とキャスト情報は公式サイトに出ているのですが、配信後に消えてしまう可能性もあるので以下に貼り付けます。

 

https://pixabay.com/photos/vienna-state-opera-night-4403839/

 

PAS DE TROIS AUS LA VENTANA  

Musik: Christian Lumbye

Choreographie: August Bournonville

Einstudierung: Johnny Eliasen  

Tänzerin & Tänzer: Ioanna Avraam, Kiyoka Hashimoto, Alexey Popov  

 

WALZER & PAS DE CINQ AUS SCHWANENSEE 1. AKT

Musik: Piotr I. Tschaikowski

Choreographie: Rudolf Nurejew  

Tänzerinnen & Tänzer: Masayu Kimoto (Prinz Siegfried) Aleksandra Liashenko, Alice Firenze, Arne Vandervelde, Timoor Afshar Corps de ballet  

 

RAMIFICATIONS

Musik: György Ligeti

Choreographie: Martin Schläpfer

Kostüm: Thomas Ziegler

Licht: Stefan Bolliger

Einstudierung: Louisa Rachedi  

Tänzerin: Sonia Dvořák  

 

FOUR SCHUMANN PIECES

Musik: Robert Schumann / Martin Yates

Choreographie & Bühne: Hans van Manen

Kostüme: Jean-Paul Vroom

Licht: Bert Dalhuysen

Tänzerinnen & Tänzer: Davide Dato Hyo-Jung Kang – Arne Vandervelde, Liudmila Konovalova – Alexey Popov Elena Bottaro – Igor Milos, Alice Firenze – Andrey Teterin,  Aleksandra Liashenko – Géraud Wielick  

 

WIENER BLUT WALZER

Musik: Johann Strauß (Sohn)

Choreographie: Martin Schläpfer

Kostüme: Susanne Bisovsky

Licht: Robert Eisenstein  

Tänzerinnen & Tänzer: Olga Esina – Marcos Menha, Hyo-Jung Kang – Masayu Kimoto Kiyoka Hashimoto – Géraud Wielick, Ketevan Papava – Calogero Failla Sinthia Liz – Duccio Tariello, Ioanna Avraam – Arne Vandervelde Elena Bottaro – Zsolt Török/Daniel Vizcayo    

 

GRAND PAS CLASSIQUE

Musik: Daniel François Auber

Choreographie: Victor Gsovsky

Kostüme: Chanel  

Tänzerin & Tänzer:  Valentine Colasante & Marc Moreau

Étoiles des Ballet de l’Opéra de Paris  

 

BLACK PAS DE DEUX AUS DIE KAMELIENDAME 3. AKT

Musik: Fréderic Chopin

Choreographie: John Neumeier

Kostüme: Jürgen Rose  

Tänzerin & Tänzer:  Ketevan Papava – Timoor Afshar

Klavier: Shino Takizawa  

 

PAS DE DEUX AUS DORNRÖSCHEN 2. AKT

Musik: Piotr I. Tschaikowski

Choreographie: Martin Schläpfer

Kostüme: Catherine Voeffray  

Tänzerin & Tänzer:  Hyo-Jung Kang – Marcos Menha  

 

FANDANGO & GRAND PAS DE DEUX AUS DON QUIXOTE 3. AKT

Musik: Ludwig Minkus

Choreographie: Rudolf Nurejew

Kostüme: Nicholas Georgiadis  

Tänzerinnen & Tänzer:  Ketevan Papava (Eine Straßentänzerin) – Eno Peci (Espada) Ioanna Avraam (Kitri) – Arne Vandervelde (Basil)  Corps de ballet  

 

PAS DE DEUX AUS SCHWANENSEE 2. AKT

Musik: Piotr I. Tschaikowski

Choreographie: Rudolf Nurejew

Kostüme: Franca Squarciapino  

Tänzerin & Tänzer:  Valentine Colasante (Odette) – Marc Moreau (Prinz Siegfried) Étoiles des Ballet de l’Opéra de Paris  

 

FINALE AUS ETUDES

Musik: Carl Czerny / Knudåge Riisager

Choreographie: Harald Lander

Einstudierung: Johnny Eliasen  

Tänzerinnen & Tänzer: Kiyoka Hashimoto, Davide Dato, Alexey Popov Corps de ballet