第2部・8〜10巻感想
12巻でちょうど表紙を飾るエリザベスとジェーンの2人が、関わって共謀し始めるのが10巻45話です。そこは流石に創作だろうと思っていましたが、実際に会っていたとする学説がある!らしいです。あれ?リチャードの摂政就任がメインのはず……。いや、それも書い…
リチャードとウッドヴィル(エリザベスや親族)との関係は『リチャード3世』以上にスリリング。前半では夢の話、後半では背に乗せる話について、原典の面白い転用が見られます。
多くの読者に激震を走らせた43話。リチャードが王冠への野望を認め、バッキンガムと「誓約」を結びました。43話も場面場面に何層もの意味が交錯する形で展開しています。特に43話でそれをいちいち書くのは野暮だろうとは思いますが、もーここは野暮に徹しま…
王として凋落が見えたエドワードがこの回で亡くなります。エドワードが死出の旅に出るシーンは風景も含めて何とも美しく描かれています。一方、王位の継承をめぐる対立や思惑は、原案以上に相克的かつ錯綜的に展開しています。
41話では、ヘンリー5世の闇と苦悩の部分をエドワードに、光と責任の部分をリチャードに充てて描いているように思えます。戦いを担う責任がリチャードの光になっており、それは既にリチャードの中にあるとも言えそうです。
40話41話はスコットランド戦の話になっています。ここの凄さは、原案にほとんど出てこないスコットランド戦を描き、そこに『リチャード2世』『ヘンリー4世』『ヘンリー5世』オマージュを入れ(多分)、“王とは何か”という話につなげていることでしょう。その…
今回の記事、すごく地味になってしまいました。『リチャード3世』からのジョージの子どもの台詞が健気で、リチャードの息子のエドワードと重なります。そして原典の引用箇所では2回もリチャードが嘘泣きをしています。
38話は台詞の1つ1つや設定が『ヘンリー6世』、『リチャード3世』、史料と複雑に絡まっていて非常に濃密な展開になっていると思います。ワインでの暗殺場面も、漫画化ならではの素晴らしい表現になっています。
「同じ」と「違う」は『薔薇王』でしばしば出てくる表現ですが、37話ではこれが強調されます。ここから「俺は誰とも似ていない」という台詞につながり、この台詞が元の『ヘンリー6世』でのジョージ暗殺の文脈通りに使われています。
リチャードの目的はもはや呪いの犯人の究明ではなくジョージの逮捕になっているので、ジョージが呪いに加担するように仕向け一芝居打つことになります。36話でも、ジョージの逮捕まで『リチャード3世』と『ヘンリー6世』第2部が巧みにミックスされて話が進…
(薔薇王の葬列アニメ13話対応) ジョージの逮捕と暗殺をめぐる話は9巻半ばまで続いていきますが、35話は、この件へのリチャードの関わりを、『リチャード3世』(以下、RⅢ)と史実(史料)との間に見事に落とし込んでいるように思います。『ヘンリー6世』(…
『ヘンリー6世』にこれとよく似た箇所があり、てっきりこれが使われたのだと思っていましたが、ジョージの逮捕の経緯については史実にも近かったらしく、絶妙なミックスが施されているようです。
1巻1話に出てきた「あの環の中には楽園がある」という台詞と関連づけられ、シェイクスピア作品というよりミルトン『失楽園』や、絵画の楽園追放を彷彿とさせる描写になっているような気がします。
第2部の実質的な幕開けということでしょうか、『リチャード3世』冒頭の独白数行の内容が、第2部の登場人物を揃える形で描かれています。
31話は、アンとの結婚について、史実解釈、『リチャード3世』の有名場面、第1部のリチャードとヘンリーの関係、全てが矛盾なく話の中に入っています。しかも元の台詞を異なる意味にして、リチャードの真実と嘘を語るものになっているという素晴らしい作りで…