『薔薇王』にシェイクスピアをさがして

菅野文先生の『薔薇王の葬列』についてシェイクスピア原案との関係を中心にひたすら語ります

ドロットニングホルム劇場、ヘンデル『アグリッピーナ』感想

スタファン・ヴァルデマー・ホルム演出、フランチェスコ・コルティ指揮。(こちらはシェイクスピア関連ではありません。)

 

ちょこちょこ飛ばし見はしていたのですが配信終了間際にやっとまとめて観ました。MET版と比べた感想、という以上に自分のための覚書と動画リンクの感じです。twitterだと流れてしまって自分でも探しにくくなるので。

 

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同作品は以前WOWOWで放送されていた、メトロポリタン・オペラのデイヴィッド・マクヴィカー演出版で初めて観ました。MET版は現代化され皮肉も効いた演出がかなり面白くて印象的でした。(そもそも演出に注目しがちで、指揮者より演出家を記載してしまいがちです。指揮はハリー・ビケット。)

 

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ドロットニングホルム劇場のこちらの方は、男性役はローマ風のグレーがかった白い衣装(女性役も最初はローマ風)だし、装置も絵のようでその描き方なども含めて、いかにもバロック・オペラっぽい雰囲気でした。装置は多分手動で動かしており、その様子や風の効果音を出すところも映してくれて楽しめました。なんとなくこちらの方が演奏も歌い方も更にバロックっぽい気がしたのは、単に好みの問題なのでしょうか。演出もあって話の展開を“うわー、面白い”と思って観たのはMET版の方だったりしましたが……。

 

男性役の衣装はずっと変わらないのですが、女性の衣装はどんどん変わって時代が進んで行きます(色自体はグレーっぽい白のまま)。この意味がよくわからなかったところ、配信情報をtwitterで発信されていたタムラヨシカズさんが下記の解釈をされていて、なるほどと思いました。MET版はポッペアが始めの方では猫を被っている風でしたが、こちらは序盤では健気だったポッペアがどんどん強かになっていく感じかもしれません。ポッペアの最後の衣装はパンツスタイルです。で、タムラさんが書かれているように混乱はないものの、アグリッピーナとポッペアの衣装が同時代的に変化していくのは、この2人が実は似ているというような含意があったりするのでしょうか?

 

 

METではネローネ役が女性メゾソプラノケイト・リンジー)で、オットーネ役が男性カウンターテナー、こちらはネローネ役が男性ソプラニスト(ブルーノ・デ・サ)でオットーネが女性メゾソプラノ。METのイエスティン・デイビーズオットーネは誠実ないい人の印象、こちらのクリスティーナ・ハンマシュトレムのオットーネはポッペアが好きになる男の感じがあるかもしれません(最終的にはポッペアが上を行く感じですが)。

 


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でもそれ以上に比較したかったのが、ネローネのリンジーとブルーノ・デ・サ。METの方はクスリをきめてイッっちゃってるリンジーの雰囲気がすごい一方、ブルーノ・デ・サはMET版のような振り切った演出はなくてもコロラトゥーラに狂気を感じます。こちらも目がいっちゃってる感がありますが、それ以上にコロラトゥーラ!特に後半! 

 


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アグリッピーナもポッペアも差し置いてごめんなさい!

 

あと、歌い方とかではなくて風貌の話なんですが、リンジーのネローネはセックス・ピストルズとかを、ブルーノ・デ・サはプリンスを彷彿としました。以下の動画などだともっとプリンスっぽく見えて少し狙ってますか?とも思ったり。

 


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File:Handel (climber) (9831357825).jpg - Wikimedia Commons