『薔薇王』にシェイクスピアをさがして

菅野文先生の『薔薇王の葬列』についてシェイクスピア原案との関係を中心にひたすら語ります

シェイクスピア好きな人にもそうでない人にも読んでほしい、『薔薇王の葬列』は一寸人生が狂うぐらい面白いです

今週のお題「好きな漫画」

え、今週のお題「好きな漫画」?! そ、それは『薔薇王の葬列』ファンブログとしてぜひ本作品を推さなければ。でも、普段、1話1話の感想を垂れ流すように書いているのと違って、お薦め記事は難しいものですね。本当はお薦めこそしたいのに、勝手が違って、なんだか文体もいつもと違ってきている気がします。

 

『薔薇王の葬列』はシェイクスピアの『リチャード3世』と『ヘンリー6世』が原案の菅野文先生の漫画です。私などは原案のアレンジに滅茶苦茶はまったクチですが、シェイクスピアも歴史も何も知らなくても、物語の怒涛の展開を本当に楽しめます。その感想を語るためだけに、ブログを始めてしまったぐらいです……。

 

 

間口は大変広い作品です。宣伝文には「ダーク・ファンタジー」とありまして、ダーク・ファンタジー好きの人にもきっと好きな世界観。『リチャード3世』なのに『ロミオとジュリエット』成分も入っていて、恋愛模様にもはらはらします。

 

そもそもシェイクスピアの劇や映画にもそんなところがありますよね。ストーリーを知らなければ、その分わくわく楽しめる。知っていれば、その演出や解釈に唸ったり、掘り下げて楽しむことができる。『薔薇王』は、台詞自体もかなり原案を踏まえていて、登場人物や文脈をどう捉えてどう台詞を言わせるか、そんな演出を味わうような楽しさが満載です。そのまま読むだけでも作品世界を堪能・耽溺できますし、元々の『リチャード3世』の台詞とニュアンスを変えているな、とか、史実に即して別の登場人物に台詞を言わせているな、とか、何度も反芻するようなマニアックな楽しみ方もできます

 

加えて、シェイクスピアの原案や歴史を知っていても、敢えてひねってある展開なので先が読めません。

 

もし少女漫画らしいと手を伸ばすことに躊躇しているシェイクスピア好きさんがいらしたら、読まないのはもったいないです。『ヘンリー6世』(第3部)、『リチャード3世』が軸ですが、更に複数の作品が巧みに取り入れられていて、『天保十二年のシェイクスピア』とか『恋に落ちたシェイクスピア』のような感じもあります。

 

しかも、オリジナル展開かと思っているときっちり史料準拠だったり、その史料とシェイクスピア作品を対応させる展開になっていたり、という組み合わせも見られます。例えばリチャード3世のスコットランド遠征の話を史料準拠で描き、かつそこに『ヘンリー5世』や『リチャード2世』を挟んでくるとか。クラレンス公ジョージの暗殺について、史実に近づけつつ『ヘンリー6世』第2部の別の話を持ってくるとか。歴史とシェイクスピア作品の素晴らしいミックスに眩惑させられます。

 

参照作品をあげても多分ネタバレにはならないと思って書きますが、おそらく確実に挟まれているだろう作品が、上記以外では『タイタス・アンドロニカス』『ハムレット』『マクベス』『夏の夜の夢』。私の妄想込みで、オマージュがあるかもしれないと思う作品が『お気に召すまま』『恋の骨折り損』『リア王』『じゃじゃ馬ならし』『十二夜』『ヘンリー4世』。

 

「かもしれない」も含めた一覧記事を後から書いたのでリンクします。

baraoushakes.hatenablog.com

 

とはいえ、「これオリジナル?何かのオマージュ?」とか、わからないところが結構まだありまして。シェイクスピアに詳しい方、更なる情報を提供いただけるとありがたいです。(←狙いはそこ?!)

 

すごい新演出のシェイクスピア、観たくないですか?シェイクスピアをひねった作品、読んでみたくないですか?『薔薇王の葬列』はそんな漫画です。

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始めの何巻かが無料になっている時もあります。