『薔薇王』にシェイクスピアをさがして

菅野文先生の『薔薇王の葬列』についてシェイクスピア原案との関係を中心にひたすら語ります

『薔薇王の葬列』とシェイクスピア作品対応一覧(妄想含)

〔2023年12月更新〕

元記事の方は2020年末に書いたもので、新刊が出る毎に情報を足していました。完結した後に振り返ると、第1部の『ロミオとジュリエット』、第2部の『マクベス』は、やはり主題と大きく関わっていると思いましたし、複数話(複数巻)に渡って登場するオマージュ作品は、その作品のモチーフがうまく生かされていることに改めて気づきました。元々は下記の通り姑息な理由でまとめた記事でしたが、こうして一覧にすると、パズルのような組み立ての凄さがわかり、グッジョブ私、と自画自賛したくなっています。怪しいもの込みなのはご愛敬で……。

 

〔以下は元記事分です〕

コミックス既刊分にかなり記事が追いついてきたことや、今年はかなりシェイクスピア関連作品の配信があったことで、配信作品の感想記事が多くなってきました。ブログのアイデンティティがなんだか危うくなってきたので、年の終わりは『薔薇王』関連の記事を上げておこうかな、と思いました。

 

とはいえあまりネタもなくて、姑息なんですが、既刊分で掛けられていそうなシェイクスピア作品を一覧にしてみました。菅野先生が作品名を挙げておられるものから、台詞やプロットなどで蓋然性の高いもの、相当怪しい憶測まで濃淡がありますが、そこは区別を設けていません。ある程度言えそうなものと怪しいものの線引きが微妙なので、その辺は多めに見ながら一緒に楽しく妄想いただいたり、ご活用いただければ(って何に??)。

 

『薔薇王』感想ブログとしてのやや無理矢理の記事アップですが、こうやってまとめると、今年っぽいかなという気もしてきました。今年は、同時期や近い時期に複数のシェイクスピア作品を観て、同じ作品でも演者や演出でかなり印象が変わることを実感しましたし、演者が別作品に出演するのを“この人が今度はこの役か。この人が演じるとこうなるのか。”と楽しんだりしました。

 

なんというか、劇団「薔薇王の葬列」の別演目上演を観るような面白さがある気がします。

 

例えば『ハムレット』だと、Aプロ:ハムレット=リチャード、先王の亡霊=ヨーク公、オフィーリア=アン、ホレーシオ=ケイツビー、Bプロ:ハムレット=ヘンリー、ガートルード=キャサリン妃、ホレーシオ&オフィーリア=リチャード、の豪華ダブル・キャストハムレットの重ねられ方は更に複雑なのでトリプル・キャスト以上で考えてもいいかも)で、AプロとBプロだと『ハムレット』の印象や力点が違う、みたいな……。「=」の両側ともシェイクスピア登場人物名だと、こんがらがってもうよくわからなくなっていますが、重ねられた各作品側に引きつけて楽しむのもありだと思います。

 

個人的には「薔薇王の葬列」版の『十二夜』いいなと思うんですよね。これは、シザーリオ&セバスチャン=リチャード、オーシーノー=ヘンリー、オリヴィア=アン、アントーニオ=ケイツビーの版がいいな、と。オーシーノーには王子エドワードも重ねられている気がしますが、ごめんエドワード、ヘンリー父上に負けている。『薔薇王』内オマージュには登場しませんが、なんとなくサー・アンドリュー=エドワードのイメージです(←ますます、ごめん)。

 

コロナで劇場関係は本当に大変な年であったのですが、配信も増えていますので、もしご興味を引かれたら作品をご覧いただくと(ついでに寄付などいただければ更に)サポートになるのではないでしょうか。

  

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"William Shakespeare" T.Kiya from Japan, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

 

以下、複数の話にまたがっていることも多いので、巻数しか記載はしていませんが、()付きにしているもの以外は感想記事に記載しています。

 

ロミオとジュリエット』と『マクベス』は、それぞれ第1部と第2部のモチーフとして全体に掛かっていると思いますが、特にオマージュを感じた箇所がある巻については個別に記載しました。11巻には多分他作品へのオマージュはないような気がします。

 

で、作品からの逆引きも作りました!逆引きの方は妄想や怪しいもの混みだとイマイチかもしれませんが、どちらかというと今回は逆引きをアピールしたい気持ちだったり……。

 

『薔薇王の葬列』巻別一覧 

1〜7巻(第1部):ヘンリー6世(第3部)(+ロミオとジュリエット

 1巻    マクベス、お気に召すまま

 2巻    恋の骨折り損

 3巻    恋の骨折り損、お気に召すまま、ロミオとジュリエット、夏の夜の夢

 4巻    ハムレットリア王

  5巻    タイタス・アンドロニカス、じゃじゃ馬ならし、ジョン王、十二夜ハムレット、夏の夜の夢〔の ピラマスとシスビー〕

 6巻    十二夜ハムレット、お気に召すまま

 7巻    ハムレット、 (コリオレイナスは見直して)二人の貴公子、ロミオとジュリエットソネット

 

8巻〜(第2部):リチャード3世(+マクベス

 8巻    ヘンリー6世(第2部)

 9巻    ヘンリー6世(第2部)、ヘンリー4世、ヘンリー5世、マクベス

 10巻  ヘンリー5世、リチャード2世、ソネット集、タイタス・アンドロニカス、マクベス

 (記事には書いていませんが、リチャードの体の秘密を覗こうとするバッキンガムがシンベリンのヤーキモーっぽい感じもします)

 12巻  夏の夜の夢、タイタス・アンドロニカス

 13巻  ヴェニスの商人恋の骨折り損

 (市民達がリチャードを殺せと言う箇所が一寸コリオレイナスっぽいかなと後から思いました、NTコリオレイナスの記事の方で言及)

 14巻  ソネット集、冬物語、ヘンリー4世

 15巻 ヘンリー4世、ヘンリー5世、ハムレット、リチャード2世、タイタス・アンドロニカス

 16巻 ヘンリー4世、ヘンリー6世(第2部)、リチャード2世、冬物語ソネット

 17巻 ソネット集、冬物語、ヘンリー4世

 

外伝・王妃と薔薇の騎士:ヘンリー6世(第1部)(第2部)

   2巻 ヘンリー5世、ハムレット、オセロー、から騒ぎ
   3巻 ヘンリー5世、ハムレット、オセロー、マクベス

 

シェイクスピア作品別逆引き一覧(五十音順)

ロミオとジュリエット』と『マクベス』については、上と同様、特にオマージュが入っていそうな巻を記載しました。

 

 ヴェニスの商人                13巻

 お気に召すまま                1、3、6巻

   オセロー   騎士2、3巻

 から騒ぎ 騎士2巻

 恋の骨折り損                   2、3、13巻

 (コリオレイナス  13巻 記事なし)

 じゃじゃ馬ならし            5巻

 十二夜                5、6巻

 ジョン王            5巻

 (シンベリン       10巻 記事なし)

 ソネット集            7、10、14、16、17巻

 タイタス・アンドロニカス            5、10、12、15巻

 夏の夜の夢         3、5、12巻

 ハムレット         4〜7、15巻、騎士2、3巻

 二人の貴公子  7巻

 冬物語                14、16、17巻

 ヘンリー4世      9、14、15〜17巻

 ヘンリー5世      9、10、15巻、騎士2、3巻

 ヘンリー6世(第2部)         8、9、16巻

 マクベス            1、9、10巻、騎士3巻

 リア王   4巻

 リチャード2世  10、15、16巻

 ロミオとジュリエット     3、7巻